2026年8月5日
検証
参照ゲノムの版が違うと、座標が食い違う
同じ多型なのに、資料によって位置の数字が違う。多くの場合、参照ゲノムの版が揃っていないことが原因です。まずここを確認します。
手元のデータと、調べ物をして見つけた資料とで、同じ多型の位置が違う数字になっている。解読を始めるとわりに早い段階でぶつかる現象です。
原因はたいてい、参照ゲノムの版が揃っていないことです。
版がある、ということ
ヒトゲノムの参照配列は一度で完成したものではなく、改訂を重ねています。現在よく使われているのは二つの版です。
| 版 | 別名 | 公開 |
|---|---|---|
| GRCh37 | hg19 | 2009年 |
| GRCh38 | hg38 | 2013年 |
改訂では配列の誤りが直され、隙間が埋められています。その結果、同じ場所を指す座標の数字がずれます。 数塩基のずれで済むところもあれば、大きく動くところもあります。
新しいほうが正確ですが、古い版を前提にした資料や論文はいまも大量に流通していますし、検査サービスによってどちらを使っているかはまちまちです。どちらが正しいかという話ではなく、揃っているかどうかの話です。
まず確認すること
VCF ファイルの先頭には、ヘッダと呼ばれる説明部分が付いています。ここに参照の情報が書かれていることが多いので、最初に見ます。
##fileformat=VCFv4.2
##reference=GRCh38
##contig=<ID=chr1,length=248956422>
見るべきは二か所です。
##reference の行。 そのまま版が書かれていれば話が早いのですが、書かれていないファイルもあります。
##contig の length。 染色体の長さは版によって違うので、ここから逆算できます。1番染色体なら、GRCh37 は 249,250,621、GRCh38 は 248,956,422 です。この数字を覚えておくと判別が速くなります。
chr が付くか、付かないか
ついでにもう一つ。染色体の名前が chr1 と書かれているファイルと、1 とだけ書かれているファイルがあります。
版の違いとは別の問題ですが、道具に食わせたときに「該当なし」で静かに素通りする原因になります。エラーが出ずに結果がゼロ件になるので、気づきにくい。名前の付け方が揃っているかも、最初に見ておきます。
版を揃える
手元のデータと参照したいデータベースの版が違うとき、座標を変換する道具があります。ただし機械的に変換できるので油断しがちですが、注意が要ります。
変換できない座標があります。 新しい版で構造が変わった領域では、対応する位置が決められません。変換の道具はそうした座標を落とします。落ちたことに気づかないまま先に進むと、その多型は「見つからなかった」ものとして扱われてしまいます。
変換の記録を残します。 どちらからどちらへ、どの道具の、どの版で変換したか。後から結果を見返したときに、これがないと再現できません。
実務としての結論
いちばん確実なのは、rsID を軸に置くことです。
座標は版に依存しますが、rsID は版に依存しません。座標で照合するのではなく、rsID で照合してから座標を確認する。この順番にしておくと、版の食い違いで取りこぼす事故がかなり減ります。
ただし rsID にも、統合されたり廃止されたりという別の問題があります。そちらは稿を改めます。